らくらく化学実験」/Fun Chemistry Experiment


     リモネンだもんね!

「サブタイトル」
ミカンの汁で風船を割る。風船の時限爆弾?

「実験概要」
 ミカンの皮をつぶすと汁が飛び出ますね。この汁を膨らませた風船に向けて放出すると、時限爆弾のように一定の時間経過後に破裂します。風船のゴム成分がミカンに含まれる成分に影響されるのですが、この成分「リモネン」という物質にはいろいろ興味深い性質があるようです。

「キーワード」
リモネン 光学異性体


「動 画」
ミカンの皮をつぶして、汁を付着させて十数秒・・・で、パン!。



「準 備」「操作手順」「補 足」「注意事項」

WEB非公開


「よく観察してみよう!」
 ミカンの皮の表面をよく観察すると小さなつぶつぶの組織が見えてきますが、これは「油胞」と呼ばれるそうです。皮を剥いたときに、この組織が壊れて中から液体のような成分がしみ出て、目に入れば軽い痛みを感じることもありますよね。でも、柑橘類特有の甘酸っぱい香りは、この液体から発生しているようです。あらためてミカンの皮をつぶして横から観察すると、勢いよく汁が飛び出てくるのがわかります。そういえば、小学校の給食にミカンが出ると、きまって皮をつぶして級友の目つぶしに回るようなイタズラっ子はおりませんでしたか?もちろん目つぶしは良いことではありませんが、誰でもミカンの皮には刺激性のある何やら特別な成分が溶けているということを体験的に知っているのではないでしょうか。でも、このミカンの汁で風船が割れるとは驚きです。おそらくは、汁の中に風船のゴムに影響を与える成分が含まれているのでしょう。ミカンの皮をいじくっていると手が脂っこくなるので、精油の一種のようです。試しに、ガスコンロの火に向かってミカンの汁を放出してみますと、炎が一瞬大きくなり、燃えやすい成分が含まれていることがよくわかります。やはり油の一種のようです。でも、風船が割れるということは、ゴム風船を劣化させる性質を持ち合わせていることにもなります。ミカンの皮に含まれる成分が、ゴムを弱くする何らかの働きがあるようです。


「解 説」

油の正体は「リモネン」

 ミカンの皮に多く含まれるこの成分は、リモネンという物質(モノテルペン類)で、分子構造としては二種類が存在します。リモネンの構造式図で、分子の中心部分に存在する炭素原子に*印がついていますが、この炭素は立体構造において特に斉炭素原子と呼ばれているものです。この不斉炭素原子につながる原子団は、立体的な向きが違っているのですが、この物質どうしを光学異性体であるといいます。ちょうど右手と左手の関係のようなもので、構造的に似てはいるけれども物質としては別物(鏡像体)のものが存在するというわけです。特に重要な方がd-リモネンで、柑橘類の果皮に多く含まれ、その香りの元となる物質の一つです。実験では、手頃な温州ミカンを使うことが多いのですが、本格的な蒸留という操作で得るとオレンジやグレープフルーツ、レモンからたくさん得られることがわかっています。
 リモネンには細胞を保護する酵素の生成を促進し、胃腸の機能や免疫力を高め、中枢神経の興奮を鎮静化する作用も報告されています。すでに食品添加物としてお菓子や食品などの香料として普及していて、化学工業における溶剤や添加剤、半導体製造時のフロン洗浄代替剤などにも活用されているようです。

構造が似ているものを溶かす
 リモネン分子には、二重結合が二カ所ありますが、その構造がちょうどゴムの成分であるイソプレン(C5H8:が付加重合して高分子を構成している)と似ているのです。油は油を溶かしやすいとの理屈により、リモネンはゴムを溶解させやすい物質なのです。膨らんでゴム層が薄くなっている部分にリモネンが付着すれば、ゴム成分がリモネンに溶けて強度が低下し、破裂したもの考えられます。
 また、このリモネンは、ゴムだけでなく発泡スチロールのようなプラスティックも溶かすことができます。発泡スチロールの成分はスチレンポリマーで、やはりリモネンと分子構造が似ているのです。作るに安価容易でありながら燃やすことのできない発泡スチロールの扱いに困ることは多いのですが、このリモネンを不要のスチロール梱包材などの回収に役立てようという動きもあるようです。純度の高いリモネンはほぼ同質量の発泡スチロールを吸収するのですが、原料のリモネンそのものはもともと利用価値の少ないミカン類の皮ということで、リサイクルビジネスとしても魅力があるということです。リモネン自体は毒性が低いため、洗剤やプラモデル用接着剤に使ったものまで登場しているそうです。身近な果物であるミカンの皮がまさかリサイクルで活用できるようになっているとは驚きでですね。




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