<リビングケミストリー>
「実験テーマ」玩具ボールでフラーレンモデルをつくる
「実験目的」市販のプラスティック製ボールを使って、少し大きめの迫力あるフラーレンモデルを製作する。
「学習項目」
@ 原子 A化学結合 B同素体 C新素材
「準備物」
プラスティック製玩具(トイザらスのファンボール) ハサミ 定規 ヒモや分度器 竹串(18p)90本 グルーガン
「操作手順」
WEB非公開
「注 意」
1. ボールをつなげていく作業は、全体をヒモでつり下げて行うとやりやすい。
2. 竹串の先に注意する。切り落とした竹串部分は、グルーガンで封じておくと良い。
「画 像」
ボールを1個犠牲にして「型」に使う。印を付けて竹串を刺す目印にする。 |
次々とつなげていく。飛び出た竹串の先端は切り落としてグルーガンで接着。 |
ヒモでつり下げれば立体感のある教材に |
軽いので容易に抱えられる |
「解 説」
1.
簡単安価にできる物質モデルである。直径60pで、大きさの割に軽く全体でも約400〔g〕である。原子のつながりが視覚的・立体的に理解でき、大きさ的にも迫力がある。釣り糸を使用してつり下げれば、空間に浮かせる感じになって、見栄えも良い。炭素原子の共有結合角、同素体で新素材についての理解を深めることができるだろう。何と言っても、材料のボールが、大手玩具店のトイザらスで「ファンボール」という商品名で販売されているもので、100個で999円と安価である。5色が混じっているので最低でも3セットを同時に購入することにはなるが、色の違うフラーレンモデルをいくつも作ることができるので大変リーズナブルである。ただし、作成したフラーレンモデルは、構造を理解しやすくした球棒モデルであり、球棒モデルは、原子を球、共有結合を直線で表現したもので、結合角と結合距離を表すことはできるが、原子の大きさは反映されていないことには注意する。
2.
工作のモデルとした物質はフラーレンの中でも、サッカーボール型として最も有名なC60である。建築家バックミンスター・フラーが設計した建物に似ているので、その名をとって、バックミンスターフラーレン(Buckminsterfullerene)とも呼ばれる。球体の直径は0.71nm、32面体(5員環12個と6員環20個)から形成される余った結合が出ない安定な構造で、60本の単結合と30本の二重結合が存在すると考えてもよい。炭素間の結合距離は、6員環と6員環が接するC-C結合は、0.139 nm、5員環と6員環は、0.143 nmであり、グラファイトの0.142nmに近いが、電導性は小さい。
3.
C60フラーレンの発見は1985年、クロトー・スモーリー・カールの3名によるもので、ともに1996年度のノーベル化学賞を受賞している。個々のフラーレンは、毎秒108回以上の高速で回転しており、化学反応性に富み、様々な誘導体を形成することから、多分野での開発研究(樹脂、特効薬、化粧品、電子材料など)が進められている。2010年に、フラーレン発見25周年を記念して、大手検索エンジンのグーグル社が、ユニークなロゴを公開したが、ロゴの中央で回転しているフラーレンが話題となった。
「参 考」
篠原久典『ナノカーボンの科学』講談社ブルーバックス
岩田久道(渋谷幕張高等学校教諭):ファンボールを使った物質モデルの製作についての情報提供