「らくらく化学実験」/Fun Chemistry Experiment

華麗なる過冷却

「実験テーマ」
爆発的な結晶化「ブレイク」を起こす
過飽和状態の酢酸ナトリウムに刺激を与えると、一気に結晶となって析出し、熱を発する。
「学習項目」
@溶解度 A飽和 B過冷却 C発熱反応 Dブレイク
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「画 像」
左:酢酸ナトリウムの過飽和溶液に結晶核を投下すると、一気に結晶化が起こる。
右:三水和物:水=25g:10g の割合で調整すると失敗が少ない。この場合は、濃度43-45%になっている。



「画 像」
左:フラスコ横から観察すると、立体的に結晶が析出する様子がわかる!
右:熱で再溶解させる温熱パッドには、ブレイクを起こすトリガーが封入されている。



「動 画」
結晶核を投下:結晶が一気に成長していく様子



「動 画」
ブレイクの際に発生する熱を利用した温熱パッドの温度を測ってみた。



「動 画」
丸底フラスコ中で立体的な結晶化が観察できる



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準備物」

500mL〕ペットボトル 酢酸ナトリウム三水和物50g〕 水20mL〕 

「操作手順」

 WEB非公開

「注意事項」

1.  ペットボトルの湯せんは、75〔℃〕を目安とする。それ以上高くするとボトルが変形することがある。

2.  ペットボトルを湯せんすることで実験を繰り返すことができる。

解 説」

1.  突然結晶が析出してくる

冷凍庫の中で一定時間置いたドリンクをカップに注ごうとしてキャップを外したとたん、突然凍り出してしまうという、いわゆる「過冷却」と同類の現象である。一般に、水に溶解しやすい物質の溶解度は、温度上昇に伴って大きくなるものが多く、溶解度に達した飽和溶液をそのまま冷却していけば、その温度の溶解度に応じた余分な結晶がすぐにでも析出してきそうなものである。しかし、いったん溶解させた物質は、溶解度を超えた状態でもなかなか結晶が現れてこないのである。これは、溶解成分が物理的刺激によって核となる相を生成させるために、一定のエネルギーを要するからである。特に、酢酸ナトリウムは、安定した過飽和状態を維持できる物質で、飽和に達してから大幅に温度が低下しても結晶の析出が起こりにくいのである。しかし、結晶核を投入するなどの刺激を与えると、一気に凝固が始まって容器が結晶で一杯になってしまうくらいの劇的析出が起こる。この劇的な変化をブレイクといい、そのきっかけを作る核となる素材をトリガーと呼ぶこともある。

2.  熱が発生する

このブレイクによる劇的な結晶析出には、大量の熱の放出が伴う。これは、結晶核の投入によって溜まっていたエネルギーが一気に解放されるイメージに合致するものである。近年、この酢酸ナトリウムを封入し、融解と凝固を繰り返すことで再利用可能となるカイロが販売されるようになった。ビニールの容器内部には、トリガーとなる金属片が入って密封されているだけというシンプルな構造をしている。金属片は、ヘアピンやボタンのように細工され、それを曲げたり押すなどの刺激を与えるだけで、透明液体が白い不透明の凝固体へと変化し、その時に発生する凝固熱をカイロとして利用するというものである。製品の一部の仕様書には、次のように熱の出入りを表現した熱化学方程式が記載されているものがある。

 

CH3COONa + 3H2O = CH3COONa3H2O + 39.5 kJ

  

酢酸ナトリウム CH3COONa(過飽和状態の溶液にある) が三水和物になる際に、熱エネルギーを放出するというように説明がなされている。しかし、実験で使用する酢酸ナトリウム三水和物は、加熱によって融解(58)し、水分子離脱が起こって、しかもその水に酢酸ナトリウムが溶け込んで過飽和に至るという、極めてややこしい過程を経ることには注意したい。

「参考」
藤田勲『酢酸ナトリウム溶液をブレイクさせるトリガー』化学と教育439

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山田暢司