らくらく化学実験_尿素 結晶 クリーピング

何となくクリスタルツリー

樹形をかたどった画用紙などの先にきれいなクリスタルの房がどんどん成長していく。確かに何となくホワイトスノーな気分ではある。

「実験テーマ」
結晶の花を咲かせる
尿素の水溶液が毛管現象により木や紙に浸透し、水分の蒸発により次々と結晶化していく。

「学習項目」

@  溶解 A再結晶 B表面張力 C毛管現象


「画 像」
炭や紙など微細な構造を持つ素材が良い


「動 画」顕微鏡の低倍率で観察。みるみる成長していく様子がわかる。



準備物」
「操作手順」
「注意事項」

1.  コーヒーフィルターは白色のものを用い、形状は適当に工夫すると良い。

2.  コーヒーフィルターに析出した結晶は壊れやすいので、始めからあまり移動しないで済む場所を選んで操作する。

3.  湿度が高くなると空気中の水分を吸収して結晶が消えやすくなるので、乾燥した場所に保管する。

解 説」

1.  毛管現象による結晶の成長

尿素液に加えられた洗剤(界面活性剤)により表面張力が弱められるので、溶液が毛管現象によって松かさやペーパーフィルターに浸みこんでいく。それらの素材は、微細な構造を持ち表面積が大きいため、水分が蒸発しやすい。溶解度が大きく、たくさん溶け込んでいた尿素が、大量の結晶となって析出してくるというもの。乾燥しやすい先端部に結晶ができ、そこに重なるように次々と結晶の房が成長し、まるで白い花が咲いたようになるので、ケミカルフラワーと呼ばれることもある。界面活性剤は水の表面張力を弱め、クレンザーは結晶の核をつくりやすくし、洗濯のりは析出した結晶を壊れにくくするための工夫であるが、添加する割合は正確でなくとも良い。ただし、経験的には、洗濯のりを加えすぎると、水分の蒸発が抑制されて結晶が成長しにくくなる。スライドグラスに尿素液を滴下して顕微鏡で観察すると、爆発的に結晶化していく様子がわかり興味深い。実験では、白色結晶に蛍光マーカーで着色してみたが、コニファーなどの針葉樹を材料にミニクリスマスツリーを作ったりと、楽しみが広がる実験である。

2.  身近だが有機化学史上重要な物質「尿素」

尿素 (NH2)2CO は、身近なところでは、乾燥によるひび割れに効くというクリームや肥料に使われ、比較的安価に購入することができる。哺乳類や両生類の尿にも含まれており、成人は毎日約30g〕の尿素を排泄しているといわれている。尿素は、水に大量に溶け、20℃での溶解度は108g/100g水〕であり、溶解時には吸熱反応のため溶液が冷たく感じられるはずである。次の熱化学方程式からは、尿素1〔mol(60g)から、100g〕の水が、(15400/4.18)/10036〔℃〕も温度が下がる計算になる。

(NH2)2CO + aq = (NH2)2COaq - 15.4 kJ

この吸熱反応は、硝酸アンモニウムと尿素の混合物による携帯用の冷却パックにも利用されている。また、1828年に、ドイツの化学者フリードリヒ・ヴェーラーは、シアン酸アンモニウムの水溶液を加熱して尿素を得ることに成功している。この合成法は、人類によって初めて無機化合物から有機化合物を合成した方法で、尿素は有機化学史上非常に重要な化合物でもある。

「参 考」
山崎昶『化学マジックタネ明かし』講談社ブルーバックス


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編集:山田暢司