○味がなくなりました:LHR焼きいも考

 
LHRで2回目の焼きイモを実施した。生徒に聞いてギョッとしたことには、最近は家庭で電子レンジでチンしてから火に入れる方法があるらしい。レンジのマイクロ波により、中が白いまま水分が抜け、香りも無い、ぱさぱさしたインスタントイモだ。しかも、時間の関係でまだ炎が強い内に投げ入れるので周りは焦げているのに、中は半生である。本物の味などほど遠い。
 サツマイモにはアミラーゼという糖化酵素が含まれているので、炭火による遠赤外効果で、多糖類の加水分解が進み、だんだん甘くなるのである。だから、だらだらと遅くまで残っていたグループのイモは、中身はまっ黄っ黄色、水分甘み申し分ない和菓子のような本物焼きイモが味わえたというわけだ。ちなみに、ジャガイモをいくら加熱しても甘くならないのは、このアミラーゼという酵素を持たないからである。サツマイモ万歳である。焼きイモだって、きちんと教材化すれば多糖類の化学反応+モル計算付きの立派な化学実験になるのだ。

 ここ数年、学校や地域では、焼きイモどころか、たき火すら禁止のところが多くなった。これは事件である。昔は(みんなの親世代まで)教室には煙突ストーブなるものがあって、大ナベに湯を沸かし、そこに玉子、牛乳、弁当パックまでごちゃごちゃ入れて温めたものである。インスタントラーメンなどを入れる生徒もいて、昼休みのストーブの周りは火遊びフィールド、暖まりながらのおしゃべり場、まったりと時を過ごす交流サロンのような役割をしていたものだ。
 ところが最近は火気厳禁、安全第一なら良いそうだ。小中学校も煙突ストーブが撤去され、空気をホコリとともに遠慮なくかき回すファンヒーターが導入された。おかげで教室内が乾燥し、当然インフルエンザも流行する。生徒は、火の扱いも不得手なら家事手伝いもしなくなった。小・中学校からウサギやニワトリ、草花等が消え、子どもが動植物の世話をする機会が減ってしまったこととも無関係ではない。
 先生達も忙しいから、動植物の世話どころではない。第一、生き物は死ぬから、命の大切さを教える関係都合が悪い。面倒な子どもの相手よりもパソコンに向かって報告書が忙しい。世間は「学力低下ブーム」だから、生徒を机にかじりつかせて××計算をやらせていますと言えば、保護者もとりあえずは納得安心する。
 ただ、偏差値はそこそこ高くても、火や刃物が扱えない、手を汚したがらない、準備も片付けも進んではやらない、本読まない、工作しない、朝起きられない、清掃片づけ段取り苦手、協調性無く、外の世界に関心を持たず、ただただ我が趣味、我が道を行く・・・中身が黄色いイモなんて見たことない、煮物なんて気持ち悪い。・・・現在の地域や学校のあり方が、こんな若者ばかりを育ててしまっているのではないか、自責の念に駆られている。


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Script by 山田暢司