○初期条件の大切さ:高校1年はジャンプの助走
 
 初心忘るべからず。一年の計は元旦にあり。千里の道も一歩から。一円を笑う者は・・・
(これはちょっと違う?)・・・つまりは、初期条件、最初が肝心ということなのである。入学以来、ひと月を経過したくらいなのだが、なれ合いけじめ欠如のような状況が見られないことを願う。号令挨拶で時間の区切り・気分切り替えを態度で示せているか?授業中マンガ?携帯?言動・態度・服装・交友関係なども異常なほど変化を遂げてはいないか?などなどである。

 
初期条件=始めが肝心というテーマなのだが、初夏にやや冬っぽい話題である。かつて自分が宮城県(古川高校)でスキー部顧問をしていた頃の話。当時赴任していた高校は、国体やインターハイの常連で他高・大学選手、オリンピック代表選手とも合宿や練習会場が一緒になることが多かった。
 ある時、多くの実績ある選手の中にW大学に入学したての若い選手がいて、聞くと高校生と同じジャンプ台で明日から一緒に飛ぶのだという。彼に言わせれば、結局モノを言うのは、ジャンプする前の地味な助走段階の速度と姿勢、直前の立ち上がりの瞬発力とタイミングなのであって、「初期条件が大切、飛行の前にほとんど勝負は決まっている」のだそうだ。つまり、鳥ではないのだから、空中でじたばたしてもダメということなのだろう。テレビ画面では飛んでいる雄姿ばかりが映し出され、競技では、飛型点なるものも評価の対象にはなる。しかし、ジャンプの成否は、踏切台を飛び立つ初速度と飛び出した角度の関数で決まると言って良い。選手がジャンプ台の上方から滑降してくるときは、何もしていないように見えるが、風の抵抗と体重、スキー板と雪の摩擦力、さらに温度条件が加わって初速度がほぼ決まってしまう。
 進路向け受験勉強にたとえれば、まさに高校1年生時での地道な努力なのだろう。いよいよその時となって、踏切+立ち上がりパワーの真価が問われる。いずれ踏切進路の方向、どの道に進むのか、固定した方向に飛び出さねばならない。飛び出すその場になってあれこれと、進路方向に迷いがあっては成功はおぼつかない。飛び出したなら微調整あるのみで、しかも飛型を保てなくて、失速・落下の怖れもあるのだ。なんとかなるさー、明日があるさー、などと楽観も聞かれるが、すでに着地してからは、後から飛んでくる選手を着地点から仰ぎ見るのみである。高校1年はジャンプの地味〜な、助走に相当するのである。

 
 さて、かくして顧問の自分は、翌日、競技役員としてジャンプ台のふもとに立たされ、風速OKの合図の旗振り係を務めることになった。観衆がゴマ粒のように見えるほどの高さ、足場の悪い上、風に煽られてそのまま滑走路に転落してしまうのではという恐怖で足が震えた。しかし、例のW大の学生君は素晴らしいジャンプを披露、その瞬間だけは恐怖を忘れ、すばらしい跳躍に感動したことを想い出す。
 その後、彼は将来を期待され、ベテランを押しのけて日本代表に大抜擢された。そして、オリンピック3大会で活躍、ノルディック競技団体で金メダル、ワールドカップで個人総合優勝を積み重ねることになった荻原健司さんであることを数年後のテレビで知った。この初夏にそぐわない話題ではあるが、進路・受験と聞くだび、その才能が花開く直前の彼の言葉を思い出す。ジャンプする前の助走・・・飛ぶ前に勝負は決まっている。・・・空中でじたばたしても・・・。さすが、超一流の人たちの言語は重いものである。ちなみに、荻原さんは現役引退後、国会議員
(参院)としても活躍されたと聞く。

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Script by 山田暢司