○科目選択〜文系でも理系でも・・・それで良いのだ

 科目選択の集計中である。高校入学まだ2ヶ月だというのにもう進路選択に関わる決定をしなけれなばらない。誤解の無いように述べておくが、あくまで来年度の教科書数、クラス数、教員の人員配置にともなう法令に基づく作業であり、学校独自の都合ではないので悪しからず。しかも、説明会で何度も強調したが、絶対こうしなければならないという選択ではなく、よりベターだという程度のものである。物理を選択したからといって、将来、電気や機械工学系での活躍が保証されるわけではない。あくまで方向性を定めるのみである。今や完全無欠の文系と思われている保険業界や証券、銀行業界でも物理・理工系学生に求人が山と来る時代でもあるし。
 
 さて、文理選択に関わるエピソードである。かつて1年生化学の授業で受け応えの不得手な生徒Kがいた。化学の授業中に発問、こちらが助けを出してもさっぱりポイントがつかめない・・・というか、照準の合わない答え方をする。当然、化学が不得手なのだろうと勝手に思い込んでいたところ、意外にもこの生徒は理系コースを選択したらしく、3年の化学Uでまた顔を合わせることになった。「何で理系?この生徒大丈夫?化学実験で遊べるとでも思ってたりして?」と思い、理由を聞くと、Kは就職希望であるという。「おいおい、そんなことなら何で理数科目ばっかりのコースを選ぶんだい、就職だってこのリーマンショックのご時世、そう簡単には・・・」と勝手に思い込んでいたのである。
 しかし、その後、彼は進路相談で時たま化学室に来るようになり、相談の中で「照準」が合っていなかったのはその生徒ではなく、教員である自分の方であったと気づき、後に深く恥じることになる。その生徒Kは、海外在住経験が長く、複雑微妙な日本語のやりとりがやや不得手であったのかもしれない。だから数式や化学記号の世界の方が自分に合っていると考えたのだろう。しかも、メカニックなことには極めて詳しい。特に、自分の将来について語ってくれた内容がこれまたすごい。平和を保つ仕事がいかに大切か、いざ紛争や災害というときに体を張って人命を守り、国家社会のために働きたい、世の中に尽くせるような仕事をしたいのだという。
 まだ18歳である。今どきこんなにしっかりした考えを持った若者が日本にどれだけいるだろうか?彼Kは、競争率実に35倍と言われる超狭き門の某専門公務員を目指し、猛勉強の末、3次まである試験を現役で見事にクリアしたのである。その専門性たるや、
0.1秒、数度単位の照準の狂いが命を左右するような精度の仕事である。卒業後数年でエリートとして仕官することになるのだろう。
 学校の進路指導では、彼の選んだような危険性の伴う保安業務をすすめない傾向があるように思われる。しかし、文・理、進学・就職でも、どの道を選ぶにしても、事を成就するには高いモチベーション
(動機)が必要だということを納得させられるエピソードである。また、個人的には、生徒から学ぶことも多いということも深く自覚する機会となった。

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Script by 山田暢司