○凡人の早さは偉人の速さを凌駕する:凡庸なる高校生へ

 アキレスのパラドックスという話を知っているだろうか?と言いながら、数値の部分は、記憶があやふやで作り話になるかもしれないからご容赦。古代アテネの元祖アスリート「アキレス」は100mを10秒で走り、「亀」はその10分の1の走力であったらしい。そんな「スーパー亀」がいるわけはないのだが、これはギリシャ時代の哲学者が弄した「詭弁」という手法の話である。「アキレス」は100m先のゴールを目指し、「亀」はゴール手前10m90m地点でスタートを切った。さて、先にゴールにたどり着くのはどちらが先かという問題である。「アキレス」が「亀」のいた90m地点に到達するのに9秒を要するが、その時すでに「亀」は9m先の99m地点に進んでいる。「アキレス」がさらに9m進んで99m地点に達するのに0.9秒を要するが、その時「亀」は0.9m進んで99.9m地点にいる。さらに、「アキレス」99.9mにたどり着いたときに「亀」は9cm進んで99.99mに達しており、かくして古代随一のアスリート「アキレス」は永遠に鈍足の「亀」を追い抜くことはできないのだというおかしな寓話である。これは結論を先送りにする詭弁で、ギリシャ時代の哲学者間で流行した手法である。諸君は、この話のどこが論理的におかしいか、明確に論破できるだろうか?インチキ話を同じレベルの土俵で論じることは、なかなか難しいものである。それが、ペテン・魔術師、詐欺師、政治屋が世の中からなかなかいなくならない理由の一つでもある。

 さて、次は現代競技の実話。世界最速スプリンターのウサイン・ボルト(ジャマイカ)は、何と100m走9.58秒という記録を保持している。では、この人間の限界値とも言えるアスリートに、平均的な高校生が走り勝つ方法はあるだろうか?考えてみよう。そんなの馬鹿らしくって考えるまでもない、勝てっこないよと思考停止に陥ること必至である。確かに、凡庸なる高校生である限りは、いくら同じ土俵で戦っても勝てないはずであり、これは非常な物理法則と言っても良い。しかし、ギリシャ哲学者よろしく、詭弁を弄することはしまい。方法はあるのだ。簡単明快である。ボルトよりも、早くスタートを切ることである。凡庸なる高校生でも、わずか25m先を走っていれば、間違いなく世界最速のボルトよりも100m先のゴールにたどり着くことであろう。

 そして進路学習の話である。陸上競技には厳格なるルールがあるだろうが、進路対策には存在しない。いくら早くスタートを切っても、規則違反だといって非難されることはないのである。しかも、仮に能力的には凡庸であっても、早くスタートすることが、いかに戦いを圧倒的に有利に進めることができるかについては、先述の陸上の覇者ボルトに勝つ知恵の例から明らかであろう。「頭が良い=学力が高い=進路実現できる」などと信じ過ぎてはいないか?本当のアタマの良さなんて、神様にだってわかりゃしない。学力差なんて、単にせっせと準備・戦略を進めてきたかどうかの差でしかないのである。

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Script by 山田暢司