らくらく化学実験_抽出 酸塩基反応 中和 染色 繊維

紅染めにしてくれない   紅花染め 抽出 中和

「実験テーマ」

ハンカチを紅花染めにする

「実験概要」

紅花から紅色素(カルタミン)を炭酸カリウムによりアルカリ塩として抽出する。その後、クエン酸で中和すると、弱酸である紅色素が遊離してくるので、繊維に固着させることができる。世界最古の染色法とも言われている。日本古来の伝統染色において特筆すべき存在のベニバナ染めであるが、二種類の色素が含まれていて、それぞれ染色の作業も染色作品の出来映えも異なる。

「学習項目」

@  酸塩基反応 A植物色素の遊離 B天然繊維

末摘花として知られる

色濃くなる前の花を摘む

花びらを布に包んで水溶性の黄色素を絞り出す。はじめの濃い液は取っておいて黄染めにする。

水溶性の黄色色素はここでできる限り除いておかないと紅染めが難しくなる。

アルミニウムイオンで媒染すると、黄色色素が定着する。

大量に染液を得るには、布ではなく、容器を使うとよい。

アルカリ性下で赤色素を取り出す。色素のカルタミンは、塩を
作って溶解する。

完全に色素を搾り取ったあとの花びらのカス。色素はかなり得ることができる。

アルカリをクエン酸で中和する。二酸化炭素の発生が止まるまで加えること。

染液に色が付いているうちは何度か使い回しが可能。取り出して陰干しして乾かす。

原液が薄い場合は、繊維をここで浸して、このまま酸の中和を行ってもかまわない。

繊維を薄いクエン酸液に浸すと、色素が遊離してくる。浸ると鮮やかな赤色となる。

木綿の絞り染め:黄色色素が残っている場合は良く洗い直す。

毛(上)、木綿(右)の薄紅色も美しいが、やはり絹の染まり方はずば抜けている。

左:黄色 右:紅 同じ花びらからこれだけ違う色調が得られる。

ガーゼは少ない染料でよく染まるので生徒実験向き。

YouTube動画:染色作業の様子

「準備物」ハンカチ4枚分の材料
紅花50g 染布(ハンカチ)4枚 ポリ袋 搾り用ボロ切れ 絞りデザイン用具(割りばし・タコ糸・輪ゴム・ビー玉等) ハサミ 5%炭酸カリウム水溶液500mL 容器T(バッドまたは器具乾燥容器の受け部分) ビニール手袋 染色用容器U(別のバッド:容積1L程度) クエン酸粉末50g 持ち帰り用ビニール袋 500mLビーカー 5%炭酸カリウム(K2CO3 )水溶液500mL クエン酸粉末50g 

「操作手順」WEB非公開

「注意事項」

1.  出来た染め布を塩基性溶液に触れさせないこと。

2.  流水中で布を開くとき、糸を切る際には布を切らないように注意する。

「解 説」

1.  酸の遊離を利用して繊維への固着をはかる

ベニバナには主に二種類の色素が含まれ、黄色色素を溶かし去った後に残る赤系色素がカルタミンである。花びらから色素を抽出、繊維に固着させるのは、二段階の中和反応である。紅花色素は水に溶けにくいが、分子内にフェノール性ヒドロキシ基を含む共役系構造をたくさん持っているので、炭酸カリウム水溶液を加えると、カリウム塩を形成し、水溶液に溶出してくる。そこに、紅色素よりも酸性の強いクエン酸が加わると、カリウム塩となっていた紅色素が遊離し、繊維に固着してくるのである。色素分子を□として、反応を簡略化して表現すると・・・。

 □-O-K+ + H+ → □-OH + K+ 
色素のカリウム塩  色素が遊離
(イオンとして溶解) (水に不溶)

2.  最古級の繊維染色技術

日本の伝統工芸おいて特筆すべき技術の紅花(ベニバナ)染め。材料である紅花は中東原産で、古くはエジプト第六王朝時代の碑文にその記述があり、繊維染色としては最古級である。日本へは、推古天皇期(594-626)にシルクロードを経て伝えられたとされるが、最近の考古資料によると、伝来時期はかなりさかのぼるようだ。万葉時代はベニバナのことを「くれなゐ(紅)」と呼び、数首の歌に詠み込まれている。茎の先端に付いた花を摘むことから、末摘花(すえつむばな)とも呼ばれ、こちらの名の方は源氏物語でも知られている。ベニバナ色素は、古来より衣料はもちろん、化粧用の「紅」としても重宝され、価格は一時金を上回るものであったという。江戸の初期には、最上ベニバナ(現在は山形県花)が、海船で酒田〜敦賀へと、大津を経て京へと運ばれていた。いわゆる「紅の道」であり、かの上杉鷹山も栽培を奨励し、米沢藩の財政立て直しに大いに貢献したとある。

「参 考」
紅花から学ぶ化学の授業実践例
水上勉『紅花物語』
・山崎青樹『草木染技法全書』(美術出版社)
・加藤貴一『武州桶川べにの花』
・岡本螢『おもひでぽろぽろ』(スタジオジブリ)
万葉集巻11-2763『紅の浅葉の野()らに刈る草の束の間も吾を忘らすな(作者未詳)』 「浅葉の野」は、埼玉県坂戸市浅羽野地区に比定されている。
・そだててあそぼうベニバナの絵本(渡部俊三 小野恵二 農文協)
・万葉植物事典(山田卓三 中嶋信太郎:北隆館)
・伝統的な染色技法や関連の事項について→色の万華鏡(吉岡幸雄)
ベニバナ(くれなゐ)を詠んだ歌:
紅の深染めの衣を下に着ば 人の見らくににほい出むかも 万葉集 巻十一 2828 作者不詳 
『歌意』 紅の色濃く染めた衣を下着として着たのだが、人が見てその色が透けて見えはしないだろうか。
トップページへ戻る→
編集:山田暢司